『シュナの旅』宮崎駿:書評/感想

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シュナの旅

宮崎駿

アニメージュ文庫・徳間書店

 

 宮崎駿氏は"宮崎駿監督"と呼ばれる。まるでそれ全体が彼の本名のようだ。語呂がいいのか、何なのか。いつからかは分からないけれど、彼はそう呼ばれていることが多いように思う。けれど宮崎駿"監督"は監督である前に、漫画家でもある。手塚治虫ウォルト・ディズニーのように。けれど彼らと違うと思う点がある。それは特定の登場人物だけでなく、背景の自然さえも一つの登場人物のように思える点だ。色が変化し、うねり、音を奏でる。宮崎駿監督の作品を観ると、そのことが分かるだろう。『千と千尋の神隠し』の電車の場面の海の情景、『となりのトトロ』の森や木々、そして『もののけ姫』のシシ神の森など。そして今回読んだ『シュナの旅』にも、そのような描き方がされているように思う。

  『シュナの旅』は1983年に出版された(『ルパン三世 カリオストロの城』が1979年に公開・『風の谷のナウシカ』は1984年に公開)。谷あいに位置する貧しい国の王子シュナが黄金の穀物を求め旅をする物語だ。一応漫画なのだが、漫画というよりかは絵本に近いと思う。文字は必要最低限書かれていて、絵はその一つ一つが絵画のよう。登場人物の細かな表情の変化、生き物の毛並み、生けし物と死んでいる(あるいは死に近づいている)物との違い。黄金の穀物も求め「神人」の土地へと旅をするというファンタジーでもありながら、貧困と食糧難、奴隷制度など現実的な要素も含まれている。要素要素としては、『風の谷のナウシカ』と似ている。さらに宮崎駿氏の息子、宮崎吾朗氏が監督した『ゲド戦記』もこの作品からのインスピレーションがあったようだ。

 『シュナの旅』は、ほとんどの人が20分以内で読むことが出来ると思う。しかし見返す度に何か感じることがあり、発見がある。一つ一つの場面について考え、悩む。書かれている文字だけでなく、その場面に描かれている情景が何を意味するのか。台詞も効果音も音楽もない、漫画というジャンルならではの面白味であり素晴らしい点だ。

  読了後、ジブリを好きな人はもちろんのこと、そうではない人も余韻を感じると思う。『風の谷のナウシカ』や『もののけ姫』、『千と千尋の神隠し』それらの作品の最後の場面はスッキリと解決はしない。愛しさや悲しさ、何かに対しての空虚感など何かしらの余韻を残したまま物語は幕を閉じる。 それらの作品と同じで『シュナの旅』の最後の場面も余韻を残したまま終わる。是非その余韻を感じて欲しい。

 

宮崎駿が、チベットの民話をもとに、オールカラーで描いた絵物語です。

 谷あいの貧しい小国の後継者シュナは、実りの種をたずさえて、はるか西方にあるという豊穣の地をめざす。その地には、人々の飢えを除く黄金の穀物が美しく輝いているというのだ。

 「この民話のアニメーション化がひとつの夢だった」(あとがきより)アニメーション演出家・宮崎駿の、もうひとつの世界。

シュナの旅』巻末より引用

シュナの旅 (アニメージュ文庫 (B‐001))

シュナの旅 (アニメージュ文庫 (B‐001))

 

 

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