#30:『巴里のアメリカ人』レビュー

f:id:moon-sky-cielo-1902:20170917043132j:plain

"An American in Paris" 『巴里のアメリカ人』

(1952年/監督:ヴィンセント・ミネリ

  

 DVDのパッケージが既にいい。抑えめの赤色で書かれた"An American in Paris"という文字。中心には大きく、男の人が女の人を抱え、ダンスをしている様子が、そして背景にはパリのコンコルド広場が描かれている。そもそも何故この作品を観ようと思ったのかというと、『ラ・ラ・ランド』がその理由だ。公開時に購入できなくて、偶然六本木の蔦屋書店で見つけたパンフレットを眺めていた時のこと。最後の方に「おすすめミュージカル映画」と書いてあり、その中に『巴里のアメリカ人』と書いてあった。

  冒頭にジェリー・ミュリガン(ジーン・ケリー)の朝が描かれる場面がある。彼が起床し、絵を描くために作業をする場所を作るまで(彼は画家なので)。アパートメントが狭いせいで、ベッドはハンモックのように天井から吊るされ、使わない時は紐で固定し、ベッドが落ちてこないようにするという面白い仕組みになっているのだが、この一連のシーンが面白い上に、どこかお洒落だと思った。机が意外なところから出てきたり、窓を開けた時の爽快感等々。只々朝の支度をする一人の男性を見ているだけであるにも関わらず、このように沢山の感想を持つことが出来る。映画って凄い。

 「ミュージカル映画」なので、いきなり登場人物たちが歌を歌い、踊り出す訳なのだけれど、この作品はどの楽曲も飽きないものばかりだった。ジーン・ケリーとジョルジュ・ゲタリのデュエット、タップダンスにフォーカスした"I Got Rhythm"、夜のセーヌ川のほとりでのジーン・ケリーレスリー・キャロンの優雅なダンス。そして、何と言ってもフィナーレの長尺のナンバー。これは20分近くある曲で、台詞は一切ない。映されるのは、カラフルなテクニカラー・ワールドと夢を描いたような舞台(セット)。実際のパリではなく、絵画の前で踊っているような感じで、『ラ・ラ・ランド』の最後の場面とも通じるものがある。さらに、このフィナーレに入るまでの流れが素晴らしいと思った。モノトーンの世界からカラフルな世界へ。感動で、思わず唸ってしまう程だ。

  美しく、コミカル、悲しくもあり、幸せにもなれる。『巴里のアメリカ人』は、「映画とはこういうことを言うのか」そう思うことの出来る、素晴らしい作品だ。

広告を非表示にする