カムチャツカの上を通る

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 エアカナダに乗り、日本に帰っている途中のこと。今どこらへんにいるのだろうか、と思って、席の前のモニターをタップした。現在地を示す地図を表示させた。その時、飛行機はカムチャツカ上空を通っていた。「カムチャツカ」。その地名をどこかで聞いたことがある。思い返すと、谷川俊太郎の詩『朝のリレー』という作品に、その地名は登場していた。

朝のリレー  谷川俊太郎

 

カムチャツカの若者が

きりんの夢を見ているとき

メキシコの娘は

朝もやの中でバスを待っている

ニューヨークの少女が

ほほえみながら寝返りをうつとき

ローマの少年は

柱頭を染める朝陽にウインクする

この地球では

いつもどこかで朝がはじまっている

 

ぼくらは朝をリレーするのだ

経度から経度へと

そうしていわば交代で地球を守る

眠る前のひととき耳をすますと

どこか遠くで目覚時計のベルが鳴っている

それはあなたの送った朝を

誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ

 詩は不思議なもので、誰が書いたものでも何か心に沁みるものがある。『朝のリレー』もそうだ。考えれば考えるほど、その解釈は何通りも出てきそうだし、そのまま読んだ通りに受け止めてもいい。

 中でも「あなたの送った朝を誰かがしっかりと受け止めた証拠」。この文が何よりも好きだ。深読みしなければ、この詩は、ただ単に朝がリレーする。今暮らしている地球は一つなんだよ。そういうことを、シンプルに教えてくれているのだと思う。ディズニーランドにあるアトラクション「イッツ・ア・スモール・ワールド」と同じことかな。

 

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