#26:『雲の向こう、約束の場所』感想

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雲の向こう、約束の場所

(2004年/監督:新海誠) 

 

 久しぶりに『雲の向こう、約束の場所』を観た。新海誠監督の作品は、『君の名は。』以来、以前にも増して注目されるようになったけれど、あまりピンとくる作品がないような気がする。多分おおよその人に引っかかるのが、詩的情景描写やモノローグ。映画は、言葉で伝えるものではない、という人もいるし、新海誠監督のこの独特の描写が好きだという人もいる。私はというと、こういう描写が好きだ。映像を観ているのに、本を読んでいるような感覚。『雲の向こう、約束の場所』は、特にその印象が強い。

  物語は少し複雑。自分も最初に観た時、よく分からなかった。前半・後半で、だいぶ印象が変わるからだと思う。簡単にいうと、前半は「青春」。中学3年生の二人の少年が、共通の夢を持ち、それに向かって飛行機作りに励む。そして彼らは一人の少女との出会いを通じて、より一層その思いを強くしていく。後半は「SF」。高校生になった二人の少年は、それぞれの道を歩んでいる。一人は青春にとらわれ、一人は青春を過去に置いてきた。そして、あることをきっかけに再び彼らは交わり「青春」の話に再び戻っていく。

 夏の澄んだ空、雪景色、教室に差し込む夕やけの光。どれも映画っぽい、というよりも本を読んだ時に想像する風景。そんな感じがする。それに作品の舞台は現実世界ではなくて、どこか違う世界。この不思議な世界観というか、現実にありそうでない世界。やっぱり全編SFなのかな。

 物語であらゆるものの答えである「塔」。北海道の大地、そして東京のビル群の間からそびえる真っ白な塔。"ただの"塔であるにもかかわらず、登場人物一人一人がその塔について思うことがある。現実社会の何かを象徴しているようで、していないようなよく分からない存在。しばらく観ていると、そびえ立つ塔に違和感がなくなり、エンドロールが流れる頃には、観ているこちら側も、その塔について考えてしまうのは不思議。

 この映画で一番好きなシーンはというと、終盤のある場面。そこの場面の背景と台詞に胸を打たれた。改めて観ると、この場面は『君の名は。』にも似たものがある。その背景も台詞も。新海誠監督なりのセルフ・リブートなのだろうか、そう思った。

 『雲の向こう、約束の場所』は、青春そのものと、青春を何らかの形で引きずった者たちの物語だ。『ほしのこえ』(2002)と『秒速5センチメートル』(2004)の間に作られた作品なので、物語が分かりにくかったりする。言い換えれば一番"新海誠感"が出ている作品。決して否定的に言っているわけではない。監督の描く「距離」と「孤独」というのは、素晴らしいと思う。特にこの作品は一番と言っていい程、「孤独」というものが面白い形で描かれている。どのような形かは、作品をチェック。

雲のむこう、約束の場所 オリジナル・サウンドトラック

雲のむこう、約束の場所 オリジナル・サウンドトラック

 

 

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