#21:『ええじゃないか』感想

f:id:moon-sky-cielo-1902:20170622172816j:plain

江戸幕府が崩壊に向かうその時、民衆は何を思い、どう生活していたのか。そんな光景が淡々と映されている。幕末劇にあるような、薩長土の志士たちを追うものでもなく、幕府を描くものでもなく。この『ええじゃないか』という作品は、あくまで、そのような時代に生きる"民衆"の物語である。

アメリカ帰りの庶民。金を稼ぐために、見世物小屋で商売をする女。利益を求め、あっちへついたり、こっちへついたりする商人。時代の流れに困惑する侍。彼らは、どう生きたのか。その様子が下品だと思うくらいに、淡々とリアルに描かれている。

 

 

作品情報

題名:『ええじゃないか』

原作:今村昌平

脚本:今村昌平、宮本研

監督:今村昌平

出演:桃井かおり泉谷しげる緒形拳露口茂草刈正雄 他

 

あらすじ

「にっぽん昆虫記」「復讐するは我にあり」の今村昌平監督が、“ええじゃないか”騒動が突如発生した江戸末期の騒然とした世相を背景に、江戸の東両国界隈に生きる種々雑多な下層庶民のバイタリティ溢れる姿をエネルギッシュに描いた群像ドラマ。

映画 ええじゃないか - allcinema

 

感想 

民衆騒ぎ

冒頭の祭り騒ぎ。ろくろ首の女芸人やヘビを生きたまま食べる芸人、異国から運ばれてきたラクダ。鮮やかな服装に身を包み、民衆はそれらを楽しんでいる。同じように、最後の場面も民衆の騒ぎが映されている。同じ音楽さえも流れている。しかしその"騒ぎ"は全く違うものだ。

一方は飄々と生活している"民衆"。一方は時代の流れに身を任せ「ええじゃないか」と唄い、踊り狂う"民衆"。同じ民衆でも全く違う様子が描かれている。これはきっとどの時代でも同じで、一生懸命に生きていても、時代の流れには逆らえないわけで、「ええじゃないか精神」はただの狂った騒ぎではなく、一生懸命に生きた民衆の成れの果ての姿なのかもしれない。

 

それぞれの物語

 物語の中でスポットライトが当たるのは、5人か6人ほどの人物だ。アメリカ帰りの庶民"源次"。金を稼ぐために、見世物小屋で商売をする女"イネ"。利益を求め、倒幕派と幕府側のどちらの味方にもつく商人(多分商人)"金蔵"。幕府の終わりを感じ、変わろうとするが、誇りを捨てきれない侍"古川条理"。琉球から来た男"イトマン"。

冒頭から中盤にかけては、源次とイネの物語が主に描かれている。貧しい生活を強いられているが故に、どうにかして金を稼ごうとする彼ら。源次は当初、日本とアメリカの状態を比べ、その状態に嘆いているようにも見え、極めて異端な民だ。アウトサイダーから見た日本というのが、多少なりとも描かれている。

そして源次の他にも、もう一人アウトサイダーがいる。それは琉球から来た"イトマン"だ。彼は彼の目的があり、それの実現のために計画を立てている。彼の目的は、悪い意味で日本の多様性を表しており、一番ジンと来た物語であった。そして"彼を演じる草刈正雄が、なんとも男前なのだ。それにも是非注目してほしい。

幕末の物語に欠かせないのが、何と言っても侍だろう。今作"古川条理"という侍が描かれている。武士らしく、まっすぐ生き、侍としての誇りを持っている。しかし変わっていく時代に適応せずにいる。武士として、これからをどう生きるのか。終盤で彼はある決断をする。その決断は「武士らしい」と言えるのではないだろうか。きっと彼のような決断をした人が、実際にいたはずだ。短いながらも、江戸時代という時代を生きた"武士の物語"が、確かにそこには映されていた。

 

ええじゃないか

傑作というほどではないかもしれないが、幕末の庶民の物語を描いた今作は、一回は観る価値がある。江戸の街並みや雰囲気、服装。大勢がどんちゃん騒ぎをする、圧巻な「ええじゃないか運動」。運動の最中、ある人物がこう言う。『時代の変わり目はきつうござんすね』。最後に発せられる、その言葉は短いながらも上手く今作のテーマを表している気がする。いい映画だった。

 

今作『ええじゃないか』は現在、iTues Storeで100円でレンタルが出来る。時間がある方は、是非観てほしい。日本人として、一度は観る価値がある作品。

 

広告を非表示にする