怪物

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この世には怪物がいる。

幾多もの人が、その怪物の犠牲となった。その犠牲者は今も年々増加している。それは人を狂気の沙汰に追い込む。しかし、その怪物は人の手によって生まれる。どのような容姿か、どのような"感情"を持っているか。人はその怪物を創造する。そして皮肉なことに、その怪物に飲み込まれてしまう。

その怪物は実に異様で、かつ魅力的でもある。それと出会うと、両の手は自然と怪物に引き寄せられる。恐れを抱くことなく、ただただ引き寄せられる。それが怪物であるというようにも認識せず。ひとたび怪物に飲み込まれてしまうと、その胃の中で溺れてしまうこととなる。胃液にまみれながら、タプタプ、タプタプと人は溺れる。だが溺れているというような感覚はなく、まるで澄んだ空を泳いでいるようだという。

 自分が溺れていると気付くのは、その胃液が鼻に入った時だ。しかしそれに気付いた時は、もう遅い。胃液が体内に入り、自分の体が沈んでしまうまで、ただただ待つしかない。その間に気は狂い、胃液に蝕まれていく自分の体をじっと見つめるという。

 

この世には怪物がいる。

怪物は人を喰らう度に、その人の記憶を自分のものとする。それを蓄積し、記憶は未来永劫残り続ける。仲間の怪物が、特定の人の記憶を知りたいといえば、怪物はペラペラと自分の喰らった人々の記憶を話すという。

 

完(仮)

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