#18:"The Lost City of Z" /『ザ・ロスト・シティ・オブ・ゼッド』感想

f:id:moon-sky-cielo-1902:20170424125048j:plain

"Z"と名付けた失われた都市を発見しようとする、一人の男の生涯を描いた映画"The Lost City of Z" /『ザ・ロスト・シティ・オブ・ゼッド』のレビュー。

 

作品情報

題名:"The Lost City of Z"

監督・脚本:ジェームズ・グレイ

出演:チャーリー・ハナムロバート・パティンソンシエナ・ミラートム・ホランド 他

原作:"The Lost City of Z" デヴィッド・グラン

 

トーリー

  イギリスの軍人パーシー・フォーセット(以降フォーセット)。彼はボリビアとブラジル間のジャングルを測量し国境を定める任務に就く。その探検で彼は陶器の破片を発彼は見する。イギリスに帰国し、その事実を学会に報告する。その陶器から失われた都市が実在すると推測した彼は、その都市を「Z」と名付ける。

 それ以降フォーセットは、「失われた都市Z」に取り憑かれたように惹かれていく。しかしそれが故に妻との関係に亀裂が入ってしまう。それでも2回目の探検に出向く。そこで出会ったのは奥地に住まうインディオラテンアメリカ先住民族の総称)。彼らと出会った事でフォーセットは、より一層「Z」の存在を信じるようになる。

f:id:moon-sky-cielo-1902:20170425112649j:plain

 3回目の探検に出向こうとしたがそう簡単に事は進まなかった。第一次世界大戦が発生し、戦場に出向くことになったフォーセット。彼は戦場で占い師に「お前は(失われた都市を探す)運命がある」と伝えられる。果たして彼は「失われた都市"Z"」を発見できるのか。

実話に基づいた、「失われた都市」に取り憑かれた男の生涯を描いた作品。

 

感想

冒頭。暗闇の中、鳥のさえずりや葉と葉がこすれる音などが聞こえてくる。それは誰が聞いたものなのか、誰が見た景色なのか。

 

「冒険映画」ではない「冒険映画」

 この映画はいわゆる「冒険映画」ではない。予告編を観るとそう思えるかもしれない。僕もその一人で「冒険映画」だと思い、劇場へと足を運んだ。しかし実際は冒険と冒険の合間の感情の変化や、理想を阻む出来事などについての物語が主だった。

 だからインディー・ジョーンズやハムナプトラなどの「冒険映画」を求めている人は残念に思うかもしれない。けれどその冒険と冒険の「合間」にこそ、冒険する意味やきっかけなどがあるのだ。"The Lost City of Z"は、冒険活劇的な「冒険映画」ではないが、古典的で正当な「冒険映画」と言えるだろう。

 

f:id:moon-sky-cielo-1902:20170425112443j:plain

 

映像の素晴らしさ

 今作はその物語だけでなく、視覚的にも素晴らしい。学会の部屋の重厚な机や本棚、ソファなど。さらに冒険の舞台となるジャングルも素晴らしかった。葉の色合い、木漏れ日の感じ、地面の落ち葉、川の中の濁り具合など、CGでは感じえることの出来ない雰囲気を感じた。もしかしたらCGなのかもしれないが、そうだとしてもチープさというのは、ほとんど(ある動物が登場するワンシーンを除けば)見受けられず、視覚的に素晴らしかった。今回スクリーンから比較的近い席で観賞したのだが、それがかえって良かったのだと思う。

 

"裏切られた"

 今作を「冒険映画」として期待していた僕は鑑賞後に"裏切られた"と感じた。もちろん良い意味でということだ。ジャングルでの冒険の場面は、全体をそこまで占めていない。3割、4割といったところだ。簡単にいうと「ヒューマンドラマ」的側面が多い作品だ。"Z"という理想・夢に対する執着。その執着に巻き込まれるシエナ・ミラー演じる妻と子供達。

 物語中盤でフォーセットと妻が口論になる場面がある。その途中に妻が「男性と女性には平等の権利がある」とフォーセットに訴えかけるのだが、その場面が必要だったのか少し疑問に感じた。なぜなら現代的価値観をそこに放り込んだ雰囲気があったからだ。多様性や男女平等などそのような問題が「描かなければいけない」ものになっている風潮が多少ある気がする。決して男女平等の権利や多様性を否定しているわけではないが、不自然に感じ、物語の勢いを停滞させていた気がした。

 

f:id:moon-sky-cielo-1902:20170425200455p:plain

 

インディオ

 今作ではしばしインディオラテンアメリカ先住民族の総称の一つ)が登場する。その描き方が僕は好きだった。冒険映画では野蛮に、動物であるかのように雑に描かれることが多い「先住民族」だが、今作ではそのように対処し、交流するのか。彼らの文化や価値観などを丁寧に描いていた。現地の方々によるエキストラなのだと思うが、彼らの表情も何か思惑を感じさせるような表情だった。是非インディオ達にも注目して観賞してほしい。

 

冒頭とラスト数分

  冒頭の数分。暗闇からジャングルの様々な音が聞こえてくる。そして焚き火を囲んで立っている人達。たったそれだけのシーンだ。しかしその数分がこの映画の全てを物語っている気がする。

ラスト数分。ある人が誰かに何かを渡し、ジャングルの中へと足を踏み入れる。

この冒頭とラスト数分。続けてみるとより一層その意味が深まるのだと思う。誰が(冒頭の)景色を見ていたのか。なぜ最後の場面に出てくる人はジャングルへと足を踏み入れたのか。

 

最後に

  物語や演出などに革新的なものはないにせよ、映画自体は丁寧で美しかった。これぞ映画だと胸を張って紹介できるものだ。良い映画だった。鑑賞後はヨアヒム・ローニング、エスペン・サンドベリ監督による『コン・ティキ』の鑑賞をお勧めする。冒険・史実に基づいた物語であると同時に、海上でのサバイバルを描いた作品だ。これも素晴らしい映画なので、"The Lost City of Z"鑑賞後に観ることをお勧めする。

"The Lost City of Z" /『ザ・ロスト・シティ・オブ・ザッド』是非観賞してみては。