#14:ディズニー実写版『美女と野獣』レビュー

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ディズニーアニメーションの名作『美女と野獣』。エマ・ワトソン主演で実写化。ベルとビースト、ガストンとルフゥ。彼らやストーリー描写のレビュー。

*本記事は、物語の内容に関わるネタバレがありますので、ご注意下さい。

 

【作品情報】

原題:"Beauty and the Beast"

邦題:美女と野獣

製作国:アメリカ

公開:2017年

監督:ビル・コンドン

キャスト:エマ・ワトソン、ダン・スティーブンス、ルーク・エヴァンズ  他 

 

【ストーリー】

ひとりの美しい王子が、呪いによって醜い野獣の姿に変えられてしまう。魔女が残した一輪のバラの花びらがすべて散る前に、誰かを心から愛し、愛されることができなければ、永遠に人間には戻れない。呪われた城の中で、希望を失いかけていた野獣と城の住人たちの孤独な日々に変化をもたらしたのは、美しい村の娘ベル。聡明で進歩的な考えを持つ彼女は、閉鎖的な村人たちになじめず、傷つくこともあった。それでも、“人と違う”ことを受け入れ、かけがえのない自分を信じるベルと、“人と違う”外見に縛られ、本当の自分の価値を見出せずにいる野獣──その出会いは、はたして奇跡を生むのだろうか…?

作品情報|美女と野獣|映画|ディズニー

 

【レビュー】

 

実写化とは

最近ディズニーは「ディズニークラシック」といった名作を実写化している。『シンデレラ』『ジャングルブック』『マレフィセント』。控えているのは『ライオンキング』『アラジン』『ムーラン』などだ。今作もその一つ。

主人公のベルは「ディズニープリンセス」の中でも現代的な人物だ。ひたすら王子様が来るのを待つような、典型的なプリンセスではない。

今作でもその側面がさらにフィーチャーされている。今作でベルは自分で洗濯機を発明し、その空き時間に読書をしている。このように原題的な解釈を入れたりして、さらに素晴らしい作品にするのが実写化だと僕は思う。さらに今作を観て、もしかしたらディズニーはオリジナル版を(知らない世代に)観させるために実写版を作っているのではないかとも思った。

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ファンタジー映画を実写化する時に不安視されるのは、命あるものに命を吹き込むと言う作業だ。『シンデレラ』ではCGを駆使して、ネズミたちが感情を持っているように表現されていた。『ジャングルブック』の実写化でディズニーはさらにその分野を強化し、クマ、サル、狼を「喋らせた」。違和感を全く観客に持たせずに、作品に取り込み、実写化を成功させた。『美女と野獣』では物に命を吹き込むことが要求された。

 

召使いたち

美女と野獣】に登場するキャラクターで魅力的なのは、何と言ってもビーストの召使いたちだ。ルミエール、コグスワース、ポット夫人、チップ。実写化と聞いて一番不安だったのが、彼らがどう再現されるかだ。これが素晴らしかった。

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オリジナル版へのリスペクトありながらも、実写らしく、「使えそうな」道具を再現していた。けれどルミエール(両手がキャンドル)が何かを触るときに、火を消さなくていいの?と思ったところが多々あった。それ以外は素晴らしい造形だった。

召使いたちのエンディングも脚色されていたのが良かった。オリジナル版では、魔法が解けずに残念そうな、表情を浮かべるだけだったが、今回は魔法(呪い)が解けずに、徐々に完全なアンティークになっていく様子が描かれていた。感謝の言葉を言いたいのだけれど、道具になっていくが故に言えない。今作で一番涙腺を刺激されるところだと思う。是非映像で観て欲しい。

 

ガストンとルフゥ

 ガストンは町の人気者。ルフゥは、ガストンを慕う付き人のような存在。『美女と野獣』の中で、ガストンは「悪役」と言う立ち位置。ベルを妻として我が物にしたいあまり、狂気に走ってしまうという、ディズニーの中でも深い登場人物だ。今回の実写版では、そこが少しだけ掘り下げられていた。

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"Gaston"という劇中歌で、ルフゥが飲み屋の客に賄賂を払う場面がある。ここはオリジナル版でなかった部分だ。けれどこのシーンがあると、後の城の襲撃シーンに影響が出るのではないか、と思ったのは僕だけだろうか。

さらにガストンのバックストーリーも少しだけ掘り下げられていた。彼はどうやら戦争帰りのようで、「刺激」がないと怒りっぽくなる。その軍人(隊長)としてのプライドのためなのか、「外見・容姿」に執着している、ということらしい。なるほど。面白いバックストーリーだなと思った。それをガストン演じるルーク・エヴァンズは見事に再現していたと思う。

今作でルフゥは、ガストンに憧れすぎて好意をほのかに抱いており、ガストンもそれを利用している、という設定に変更されている。そして幾度となくルフゥがガストンの選択に疑問を持つ場面が描かれている。オリジナル版では、ルフゥはそこまで描かれていなかったので、良かったと思う。

 

ベルとビーストの過去

ベルとビーストに、オリジナル版ではうやむやだったところに新たな解釈が描かれている。ベルは、赤子の頃パリ郊外に住んでいた。しかし母親が黒死病(ペスト)にかかってしまい、離れたところに移り住まなければいけなかった、という設定だ。

フランス・マルセイユで1720年に大流行しているので、『美女と野獣』の時代設定的にはそこらへんなのだろうか。エマ・ワトソンのインタビューでベルのバックストーリーが掘り下げられていると聞いていたのだが、意外にも簡単に説明されていた。

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ビーストにも新たな解釈が付け加えられている。幼い頃に母親を病で亡くし、父親が傲慢な人だったという。そして父親も死に至り、彼自身も傲慢な王子になってしまったという。それ故に、召使いたちは王子を見捨てることが出来なかったという解釈だ。

ベルの過去もビーストの過去もだいぶあっさり終わってしまった。期待しすぎた僕が悪かったのかもしれないが、多少の物足りなさを感じた。

 

心変わり

 オリジナルの矛盾点として「なぜ町の人が王子と城のことをいとも簡単に忘れているのか」という問題があった。今回その問題を「王子に呪いをかけた魔女が、町の人々の(王子と城の)記憶を消した」という様な解釈をして解決していた。

けれど、だいぶ城が町と近いから、誰かが狩りの最中に見つけても、いいのではないかと思ったりした。物語終盤で町の人々はガストンに連れられ、城を襲撃する。だが魔法が解け、城のことを思い出す。その町人の中に召使いの家族がいる。そこが問題なのだ。(召使いが)いくら家族でも、城を襲ったからといって攻撃するだろうか。色々と辻褄が合わないところがあると思う。

 

魔女

オリジナル版は王子がどのようにして野獣へと変貌を遂げたかが、ステンドグラスを用いて芸術的に表されている。今作はそのステンドグラスの場面を「実写化」していた。魔女はどちらかというと、本来の姿が妖精に近い形になって登場する。オリジナル版では、魔女の登場場面はそこだけだった。しかもステンドグラスで。

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その演出は魔女の雰囲気作りにも役立っていた。本来の姿が見えないからこその魔女なんだと、僕は解釈した。しかし今作では、そこの部分を明確にしていた。「そこ」とは「魔女の作中での立ち位置」だ。一言で言うと、魔女はこの物語の「影のフィクサー」だという立ち位置。

今回の実写版では大きく2つの場面が彼女に用意されている。

・ベルの父親、モーリスを助ける。

・最後の場面で直接、ベルが野獣に対して「愛している」と言うのを聞き、野獣と城、召使いたちに対しての呪いを解く。

モーリスを助けたのはいいとして、彼女がどこに住んでいるのか/正体は。それが問題だと思う。今作で魔女は森の中で浮浪者のような生活をしている。町の人々には「アガサ」という名で彼女は知られている。「アガサ」は醜い女性として生活していない。

ではなぜ、冒頭で老婆に姿をかえ、わざわざ王子の元を訪れ、呪いをかけたのだろうか。このように疑問が出てしまうような設定にするならば、「ステンドグラスの魔女」のままでよかったと思う。

また、最後の一番重要な場面でも彼女は登場する。野獣が重傷を受け、ベルが彼のそばにいる時だ。町の人々が城を後にしていく中、アガサ(魔女)だけ城の内部へと歩いていく。

そしてベルのそばを通り(ベルはアガサに、なぜか気づいていない)、魔法のバラを回収(?)しにいく。すでに時は遅し。けれどアガサはベルが野獣に「愛している」と言うのを聞く。そして彼女は魔法を解く。

いやいや。そう僕は思ってしまった。ここはオリジナル版に沿うべきだろうと。オリジナル版で何がすごいと言うと、この場面の緊迫感だ。

ベルが"I love you"と言ったのが先なのか、最後のバラの蕾が落ち始めたのが先なのか、上手い具合に分からなくなっている。しかし今作では明らかにバラの蕾が落ちてしまってから、ベルは"I love you"と言う。魔法が解けたのは、その場に魔女/アガサがいたから。随分とご都合主義な設定に変更されてしまっている。

今回の実写化で唯一のれなかった解釈だ。

 

音楽

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オリジナル版も今作も『美女と野獣』の音楽は素晴らしい。『朝の風景』『ひとりぼっちの晩餐会』『ガストン』『美女と野獣』。名曲ばかりだ。さらに今作もオリジナル版の作曲家である、アラン・メンケンが担当している。素晴らしいの一言だ。

野獣の心情を歌った曲や召使いたちの心情を歌った曲。是非劇場で聴いて欲しい。エンドロール中の曲はセリーヌ・ディオンが歌っているので、席を立たずに、その音楽を味わって欲しい。

IMAX 3Dで鑑賞するのもいいけれど、今作はどちらかというとDOLBY ATMOSの方が良いかもしれない。またYoutubeでほとんどの曲が公開されているので、鑑賞前に聴いてみるのも良いかもしれない(僕は公開前から何回も聴いていた)。下のリンクから"Beauty and the Beast"と題されているビデオを再生すれば、曲を聴ける。

www.youtube.com

 

【最後に】

 見事な「実写化」をした今作。野獣の城の造形や召使い達のキャラクター、音楽。是非劇場で体感して欲しい。ストーリーも分かりやすいので、家族連れやファンにもオススメできる作品。サクッと鑑賞できる後味も良いエンターテイメント作品だ。けれど、やはりエマ・ワトソンが出演していても、オリジナル版には敵わないと思った。

ディズニー実写版『美女と野獣』の評価は、

10点満点中 6.5点

是非鑑賞してみては。

 

・ディズニー『美女と野獣』で「ヴィラン(悪役)」の立ち位置である、ガストン。しかし本当に彼はヴィランなのか。ガストンという男についての考察記事。

moon-fim2001.hatenablog.com

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