#12:『夢と狂気の王国』レビュー

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第3回目となるCOLUMN【映画のはなし】。今回はスタジオジブリを舞台に繰り広げられる話を撮ったドキュメンタリー。

《目次》

 

【1:作品情報】

題名:夢と狂気の王国

製作国:日本

公開:2013年

監督・脚本:砂田麻美

 

【2:映画について】

2013年、東京・小金井。碧々とした緑に身を隠すようにして、国民的アニメーションスタジオの“スタジオジブリ”は存在している。宮崎駿、彼の先輩であり師匠である高畑勲、そしてふたりの間を猛獣使いのごとく奔走するプロデューサー、鈴木敏夫
観客のみならず、世界の映画関係者やアニメーションの担い手たちにも多大な影響を与え続けてきたジブリの功績は、この天才たちによって紡がれ続けている。彼らの平均年齢は71歳。「風の谷のナウシカ」制作よりはるか以前、今から50年前に高畑と宮崎は出会い、鈴木が合流したのが30数年前。かくも長期に亘り苦楽を共にしてきた彼らの愛憎、そして創作の現場として日本に残された最後の桃源郷スタジオジブリ”の 夢と狂気に満ちた姿とは…。

 (公式サイトより)

 

【 3:宮崎駿という人物】

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鑑賞後感じたのは、「宮崎駿だって人間なんだ」ということ。彼は、昔から「白ひげをたくわえたおじさん」であったわけでもなく。彼にも父親がいたし、幼少期があった。そのことを鑑賞後に痛切に感じた。僕は生まれた時から宮崎駿と言ったら「白ヒゲ・眼鏡で、エプロンを着たジブリのおじさん」なんていうイメージしかなかったものだから、初めてこの作品で宮崎駿の若き頃の写真を見た時は、心底驚いてしまった。

彼が戦後の話をした時だ。『父親が家の前に座ってる子供を追い払わないで、チョコレートを渡したんだよ。けれどその時(戦後)はチョコは売っていないはずなんだよね。どこから手に入れたのやら』みたいな話をした時に。不思議な気持ちになった。例えると、「ミッキーマウスとミニーの間に子供がいました」。そんな感じ。だから僕にとって宮崎駿という人物はある意味で「ピーターパン」のような存在なのだと思う。「老いない人」。実際問題、宮崎駿は老いている。けれど僕が言いたいのは「存在・象徴として老いていない」ということ。いつになっても宮崎駿という人物は、僕の中でいつまでも「白ヒゲ・眼鏡で、エプロンを着たジブリのおじさん」なんだ。

 

【4:主人公は誰なのか】

 この作品で主人公は誰なのか。「ドキュメンタリーなのだから、主人公なんていないじゃないか」という声が聞こえてきそうだが、ドキュメンタリーでも何かしらフォーカスする物体や出来事・人物が必要だ。この作品でそれは誰なのか/何なのか。

宮崎駿か。鈴木敏夫か。高畑勲か。観る人によっても多少違うと思うが、僕はこの作品の主人公は「スタジオジブリ」であると思う。今作のFilmarksのレビューを読んでいて、こんな人を見つけた。「なぜこれ程にも(尺が)長いのか。無駄な自然描写が原因なのではないか。これで泣かせようとしているのか。」これは一本の映画であり、作品だ。だから意見が千差万別あるのも当然のこと。

僕はこの意見に最初は微かな共感を覚えた。確かに自然描写が多い。ドキュメンタリーなら、もっと人物や作業風景を写してくれ。そう感じたのも確かだ。けれど「この作品の主人公は誰なんだ」という疑問に対して「スタジオジブリ」が主人公という答えに辿り着いた時に、この批判は僕の中で無くなった。「自然描写が多い」と批評していた人にもう一度観てもらいたい。その「自然描写」がどこで撮られているのかを。

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その「自然描写」というのは、スタジオジブリ内か、スタジオジブリ近辺でしか撮られていない。木漏れ日・花・虫・空。これらは一見「ただの」自然描写に思えるかもしれない。けれどこの『夢と狂気の王国』という作品の主人公が、「スタジオジブリ」そのものである限り、それらの自然描写はスタジオの「表情」となる。まるでジブリ作品のように。

 

【5:映画が完成するまで】

この映画は『風立ちぬ』という作品が完成するまで、というドキュメンタリーとしても観ることができる。 どのようにストーリーが出来上がるのか。声優はどのようにして決めるのか。手描きの一コマ一コマをどのようにして繋げ、そのようにしてアニメーションにするのか。そこに注目するだけでも面白い。宮崎駿だって万能のアニメーターなわけではないんだ、と思った。特にこの時『風立ちぬ』は宮崎駿の遺作とまで宣伝されていた作品であるから、彼も思い入れが強かったに違いないと思う(どうやら新作を作っているらしいが笑)。僕が凄いなと感じたのは、一枚一枚の手描きの絵をスキャンしていく人だ。まとめてスキャンする機械などなく、言葉通りに一枚一枚スキャンしていくのだ。目にも留まらぬ早さ。指を紙で切らないかとヒヤヒヤしてしまうくらいだ。声優の決め方も面白かった。エヴァンゲリオンの監督、庵野秀明氏が『風立ちぬ』の主人公、堀越二郎を声優として演じているのだが、それに至るまでの過程が面白い。庵野かぁ。庵野ねぇ。」と微笑を浮かべながら、考える宮崎駿庵野でやってみるか!」と言う。そんな感じでいいの!?観ていて、そう思ってしまった笑

 

【6:最後に】

ジブリファンの方はもちろん楽しめる。ジブリファンでなくても、作中の言葉に心を打たれることだろう。宮崎駿だけでなく、スタジオジブリのスタッフ、作品に関わる人達。「スタジオジブリ」そのものが主人公のドキュメンタリー。このレビューを書いている最中にも、もう一度観たくなってきた。今度DVDを購入しようと思う。

夢と狂気の王国』の評価は、

10点満点中 9点

夢と狂気の王国』、ぜひ鑑賞してみては。

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