#8:『耳をすませば』感想 / 僕は「西司郎老人」の物語に心を奪われた。

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作品情報

題名:耳をすませば

監督:近藤喜文

脚本:宮崎駿

 

トーリー

  読書好きな中学3年生、月島雫。ある時、今までに借りた本の貸し出しカード全てに、自分より前に必ず、同じ本を読んでいる人がいるのを気付く。名前は「天沢聖司」。どんなに素敵な人なのかと想像をする。後日、友人と帰ろうとした時に大切な、雫のアイディアをまとめたノートを忘れたことに気付いた。雫がその場所に戻ると、そこには見知らぬ男子生徒がいた。彼は、雫にキザな一言を言いどこかへ行ってしまった。

 別の日、図書館で働く父親の元へ、お弁当を届けに行こうとする雫。道中、電車に乗る不思議な猫を追いかけ、丘の上の古道具屋へと辿り着く。「地球屋」という所だ。そこで、猫の人形の「バロン男爵」や古時計などを店主の老人、西司郎に見せてもらい、魅了される雫。再び訪れることを約束し、帰ろうとする雫。すると再びキザな男子生徒に会ってしまう。

 新学期が始まり、「天沢聖司」について調べ始めると、彼が同じ学年にいることが判明する。しかも、その生徒こそ例の「キザな男子生徒」だったのだ。日が経つにつれ、次第に彼と打ち解けていき、夢を語り合う仲になり、お互いに恋心が芽生え始める。しかし、天沢聖司はイタリアへ留学のため飛び立ってしまう。その間自身の進路や夢と葛藤する雫。

 雫と天沢聖司は彼らの夢・進路・恋とどのようにして向き合うのか。「青春」をありのままに描き出し、監督近藤喜文、脚本宮崎駿が贈る、青春映画の金字塔『耳をすませば』。

 

感想

  ジブリの中でも冒険や魔法などの独特な世界観ではなく、現実的な物語の今作。「ザ・青春」というような物語で鑑賞後は爽やかな気分になる。僕の中ではスタジオジブリの中でもベスト3にランクインする作品だ。

 天沢聖司の目標へ向かって、努力する姿や雫の自分の夢に葛藤する姿などに心打たれる。そんな彼らを支えるのが、地球屋の主人で天沢聖司の祖父である西司郎だ。

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 彼自身にも物語がある。ドイツ留学中に「バロン男爵」に出会い、頼み続けるが「バロン男爵」をバロンの相手の人形を別々の所に置くわけにはいけないと断られる。そこにある女性が現れ、バロンとバロンの相手の人形をいつか必ず引きあわせるという約束で司郎は「バロン男爵」を譲ってもらう。しかし戦争が始まり、司郎とその女性は、離れ離れとなってしまう。終戦後、司郎は彼女を探すが見つからず今に至る。という物語が彼自身にもあるのだ。僕は正直、天沢聖司と雫の淡い恋よりも司郎老人の話に心を奪われた。

 また別の場面で、司郎老人は雫に「あなたは宝石の原石だ」と言う。この時僕は涙がこぼれてしまった。まさかこの映画で泣くとは思っていなかった。雫が中学生であろうと関係なく、真剣に彼女と向き合い、助言をする姿。このような人になりたいと『耳をすませば』を観るたびに思う。

 

古時計

 雫が初めて「地球屋」を訪れたと時に、司郎老人が直していた古時計。長針が12のところになると、ドワーフが鉱脈を掘っているものが出てくる。そして8のあたりにドワーフの王が出てくる。時計盤の上には、鐘がなっている時にだけ羊から妖精の姿になれる、妖精の王女が出てくる。ドワーフと妖精という住処や容姿が真逆にありながらも、お互いに恋をしている、「ロミオとジュリエット」のような物語がある古時計。

 この古時計は何かの象徴なのだろうか。そのような登場人物は出てきただろうか。天沢聖司と雫だろうか。いや違う。2人は映画のラストシーンで結ばれた。では誰か。

 僕は古時計を直していた「西司郎」本人の象徴なのではないかと思う。司郎老人はドイツで「ある女性」に出会った。彼等は、戦争によって引き裂かれてしまった。戦争という時間が、司郎老人をその女性と引き裂いてしまった。よくみると、ドワーフの王も司郎老人と同じくあごひげを蓄えている。妖精の王女の姿は、司郎老人の回想に出てくる「女性」の姿になんとなく見えないこともない。

 劇中、司郎老人が暖炉の前でドアから「ドイツで出会った女性」が出てくるという夢をみる。そのシーンから察するに、その女性はきっとすでに亡くなってしまったのだろう。その夢に対し司郎老人は『迎えにきてくれたのか』と言う。その時、僕は司郎老人が亡くなってしまったのかと思った。しかし暖炉の火が消えるとともに、司郎老人は夢から目覚める。「死」というものに西司郎老人は、この時近づいていたのだろうか。どうなのだろう。死が彼に訪れていたとしたら、雫は物語を本当の意味で完成させられなかっただろう。

 

 

海外の観客の反応

本作を海外で観ることができた。上映後、いつもエンドロールが始まった直後にすぐ席を立ってしまう、彼等(現地の人達)が席を立たず、(エンドロール)終了後、拍手がおこった。観客ほぼ全員が拍手をしていたのだ。日本の普通の生活、学生生活、淡い恋など。外国の人の心に触れるものがあったのだろうか。日本の作品であること、さらに映画館で拍手が鳴るという経験が初めてなものだったので、またまた泣いてしまった。心の中で「日本人でよかった」となぜか誇りに思ったものだ。Rotten Tomatoesという有名な映画批評サイトでも『耳をすませば』の評価は高い。90%という高評価だ。東京オリンピックで公開してもいいのではないかと思うくらいだ。

www.rottentomatoes.com

 

カントリーロード

moon-fim2001.hatenablog.com

 

最後に

青春の映像化とも言えるこの映画、また西司郎老人の物語など、素晴らしい物語を奏でる、映画だ。是非鑑賞してみては。