#5:"Fantastic Beasts and Where to Find Them"/『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』レビュー

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【作品情報】

原題:"Fantastic Beasts and Where to Find Them"

邦題:『フェンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』

監督:デヴィッド・イェーツ

出演:エディ・レッドメイン、キャサリン・ウォーターストーン、コリン・ファレル、ダン・フォグラー 他

原作・脚本:J・K・ローリング

 

【ストーリー】

世界的人気を誇る大ヒットファンタジー「ハリー・ポッター」シリーズ完結から5年を経て、新たに送りだされるシリーズの第1作。原作者J・K・ローリングが初めて自ら脚本を手がける。

物語は1926年、のちにホグワーツで使用される教科書となる、魔法動物学の研究書『幻の動物とその生息地』の調査を終えニューヨークに着いた、ニュート・スキャマンダー。ノーマジ(魔法を使えない人間、英国の魔法界では「マグル」の呼び名)のジェイコブ・コワルスキーがニュートの 魔法のスーツケースをうっかり壊したことにより多くの危険な魔法動物が街に逃げ出す。このことによりアメリカにおける魔法界と非魔法界の関係が脅かされ、ニュートはアメリカ合衆国魔法議会(通称:MACUSA)から追われる身となる。

果たしてニュートは、彼のスーツケースに入っていたビースト達を連れ戻し、魔法界と非魔法界との関係を戻すことができるのか。

映画『ハリーポッター』の世界観を継ぐスピンオフシリーズ、遂に始動。

 

【レビュー】

ハリーポッターシリーズよりも前の物語である今作。「あの」ハリーポッターの作者が直接映画の脚本を務めるということも話題となり、期待値は凄く高くなっていただろう。感想を一言で言うと、思った割には面白くなかった、である。様々なレビューを見ていると、とても面白かったという意見が比較的多いように思えるがそこまで面白かっただろうか。

 

なぜかというと、どの物語でも大事な目的が明確にされてなかったように思う。最後の方でニュートが「サンダーバード」と言うビーストをアリゾナに帰すためにアメリカに来たことが分かるが、それまでなぜニュートがアメリカに来たのかが曖昧になっているのではないかと思う。

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Creatures in 'Fantastic Beasts' - INSIDER

最後までアメリカに来た理由が説明されないまま、トランクが互い違いになる騒動がノーマジのジェイコブとの間で起きたりするのだ。観ているだけだと、なんとなくニュートが船で入国して色々起きる。最後のシーンの解決方法が分からなくなるけれど、ニュートが上の画像の「サンダーバード」をアリゾナに帰すついでにノーマジ達も忘却してしまえ。のような感じに思えた。 

もちろん興奮したシーンもあった。まず何と言っても最初のタイトルシークエンスだろう。「ヘドウィグのテーマ」がアレンジで流されている中で "Fantastic Beasts and Where to Find Them" というタイトルがハリーポッターの時と同じように雲か霧の中から現れる、というハリポタシリーズを観ていた者にとってたまらない演出。鑑賞している時に興奮のあまり思わずなんともいえない声が出てしまった。

気付いた方は少ないと思うが、劇中で使われている呪文の種類や順番がハリーポッター第1作目『賢者の石』とほぼ同じなのだ。鍵を開ける呪文の「アロホモーラ」や放たれたものが石となってしまう呪文「ペトリフェカス・トタルス」など。

また、のちに正体が明らかとなるパーシバル・グレイヴズが「死の秘宝」のネックレスを取り出した時もなんともいえない声が出てしまった。

 

パーシバル・グレイヴズ

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アメリカ合衆国魔法議会に勤める、闇祓いのパーシバル・グレイヴス。のちにグリンデンバルトという魔法使いが彼の姿に変身していたのだと分かるのだが、ここが問題だと思う。一番最初にグリンデンバルトの説明とともに彼の後ろ姿が映され、彼の髪型が観客に判明する。その後出てくるグレイヴズ。なんと、髪型が「偶然にも」同じなのだ。ポリジュース薬で、グリンデンバルトはグレイヴスに変身したのだと思うが、それならば、なぜ髪型が同じなのだ。ハリーポッターシリーズ第2作目の『秘密の部屋』でハリーとロンが完璧に変身できていたではないかと。最初から観客にヒントを与えるつもりでそのようにしたのかもしれないが、何が何でも分かりやすすぎだろうと感じたのだ。

せめて、訳のわからないお酒のように見える「何か」(ポリジュース)をグレイヴズが定期的に飲んでいるくらいなら、観客も気付く人は気付く程度で済んだだろう。いくらなんでも髪型が同じというのは、やりすぎではないかと思う。多分グレイヴスを演じているコリン・ファレルは、(グレイヴスがグリンデンバルトに殺害されていると思うので)これで最後だと思うので演技が上手かっただけに少し残念だ。

 

第2幕

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面白くないと思った他の理由は、2幕目のビースト紹介の様々な場面とそれらのビースト達をスーツケースに戻すシーンが長すぎではないか、と思うのだ。上映時間が2時間と少しあるのは第2幕のせいではないかと思う。正直寝落ちしてしまうかと思う程だった。真夜中の公園で子供達がスケートをするのか。ニュートが劇中で、一番の癒しビーストである「ニフラー」と宝石店で騒動をおこす場面もあれほどうるさいのになぜ近所の人が起きないのかなど。疑問点なども多かった。面白いけどそこまで面白くないという微妙なコメディの境界線上にあるのも理由だろう。

 

虐待

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物語の騒動の「本当の」理由となる、クリーデンスという青年の母親からの虐待。幾ら何でも酷すぎるのではないか。クリーデンスを演じているエズラ・ミラーの素晴らしい演技も加わり目を背けたくなるような虐待。

直接的な虐待のシーンはないが、声や彼自身の挙動。認められたいという一心でのグレイヴズへの協力。しまいには、そのグレイヴズ(グリンデンバルト)に裏切られるのだ。その怒りが爆発し彼はあるものに変身してしまうのだが、最終的には殺されてしまう。その時に一応登場人物は、ショックを受けているが、そこまで悲しんでいるように見えないのだ。

ニュートとともに行動する元闇祓いの女性、ティナもクリーデンスと深く関わっているのだが、彼女もそこまで悲しんでないように見えるのだ。ティナに至ってはクリーデンスの死後、ショックで動けないくらいになってもいいはずなのだが、「クリーデンスの死」というこの作品に欠かせない要素がグレイヴズの正体に全て取り去られ、今までの全てがただの布石のようにしか見えなくなるのだ(実際そうなのだが)。

 

ニュート・スキャマンダー

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本作の主人公、ニュート・スキャマンダー。クイレル先生に魔法動物学を足して、さらにネビルを少し加えたようなキャラクター。本作を英語で観たのだが、(僕のリスニング能力にも理由があるのかもしれないが)ボソボソ言っていて何言っているのかよく聴き取れないみたいな場面が多少あった。ニュートの性格を表現するためだと思う。その点は効果的だったと思う。ビーストをスーツケースに戻すための「交尾ダンス」を演じた時のエディ・レッドメインがシュールで面白かった。

   エディー・レッドメインがテレビで「交尾ダンス」を披露した時の動画(2:30あたりから)

 

最後に

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ハリーポッターシリーズを継ぐ本作。トランクから脱走したビーストの回収。虐待による怒りの暴走。この2つの要素にもう少しメリハリが出ていれば良い作品になっていたと思う。一作目という共通点で、ハリーポッター第1作目『賢者の石』と比べたら、僕は『賢者の石』の方が好きだ。けれど5作もの、シリーズになるというのでだいぶ間が空いた、魔法世界へ観客を再びいざなうという作品としては良い作品なのかなと思う。今後公開予定の続編に期待だ。

 

再び魔法の世界へ。

ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』是非、鑑賞してみては。