宮崎駿の『シュナの旅』を聴いてみた。

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画像: https://matome.naver.jp/odai/2138868562580725201?&page=1 より

 

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【『シュナの旅』とは】

宮崎駿が描き下ろしたオールカラーの絵物語。1982年「アニメージュ」にて『風の谷のナウシカ』の連載を開始したのとほぼ同時期に描かれた作品である。水彩の淡い色をいくつも重ねて着色した絵が美しい。

作物の育たない貧しい国の王子シュナは、大地に豊饒をもたらすという「金色の種」を求め、西へと旅に出る。つらい旅の途中、人間を売り買いする町で商品として売られている姉妹と出会う。彼女らを助けた後、ひとりでたどり着いた「神人の土地」で、金色の種を見つけるが…。どんな状況にあっても、生きようとする人間のたくましさ。強い心だけが生みだすことのできる、やさしさ。そして、弱さと無力さ。宮崎は、短い物語のなかに、そんなものを、ただそのまま描き出してみせる。

世界観の作りこみとそれを表現する絵の力は圧巻。特に「神人の土地」にあふれる虫、植物、巨人、月の造形には、一切の迷いが見らない。彼の頭のなかに広がる原風景を見せられているようで、生々しいほどの迫力に満ちている。死と生、喜びと恐怖の一体となったこの世界観は、以降の宮崎作品にも幾度となく登場する。

チベットの民話に感銘を受けた宮崎が「地味な企画」ということでアニメ化を断念し「自分なりの映像化」を行ったものが、本作である。だがアニメという万人に向けた形をとっていれば、また違うものになっていたはずだ。淡々と、厳かに物語が進行する本書の独特の雰囲気は、絵物語という形態であればこその魅力といえるだろう。(門倉紫麻)

https://www.amazon.co.jp/シュナの旅-アニメージュ文庫-B‐001-宮崎-駿/dp/4196695108%3FSubscriptionId%3DAKIAJBYZR3GMZFSHEFNQ%26tag%3Dnaver1-22%26linkCode%3Dxm2%26camp%3D2025%26creative%3D165953%26creativeASIN%3D4196695108 より

 

 『シュナの旅』を聴いてみた。宮崎駿の作品をアニメではない形式でふれるのは初めてだった。時間は約1時間。主人公のシュナの声優は、『もののけ姫』のアシタカ役の松田洋治がつとめている。

 

【物語について】

物語は、多くの神話や伝説などにもあるように、少年が困難に立ち向かい、それを克服し安泰をもたらす。というシンプルなストーリーラインだ。しかし、作中には「死」についての比喩的な表現や奴隷商売などの表現もあり、スタジオジブリの『ゲド戦記』、『風の谷のナウシカ』などの作品に似通った描写もあった。

(なお『風の谷のナウシカ』の漫画の連載が1982年に始まったのでどちらかというと『シュナの旅』が影響を受けたのかもしれない。『ゲド戦記』は、宮崎駿氏がこの『シュナの旅』の映画化を許可しなかったため息子の宮崎吾朗氏がオマージュを込めて製作をしたらしい。)

中でも印象的だったのは、シュナが神人の土地へ着いた後、黄金の作物(麦)を奪い緑の巨人達に追いかけられるとこだろうか。オーディオドラマでありながらも目を閉じると映像が浮かび上がってくるかのような音の表現。かすかに聞こえる、巨人達の「返せ」といううめき声。このシーンは、見方によればシュナが悪い者にもみえてくるのではないか。神人の土地から(故郷を救おうとしていたとしても)無断で麦を奪い取り、必死に逃げるというのは、泥棒と同じだ。しかし、神人と土地に入る前に「迎えられるように」という表現が出てくる。僕はこれが神人達からの挑戦だと思えた。自身の「故郷を救いたい」という欲に打ち勝てるかどうか。そういう挑戦。打ち勝つということは、麦を奪うことを諦め故郷を見捨てるということだ。またシュナには、奴隷商売が行なわれていた街で細々と奴隷商人達に見つからないようにしながら暮らすとか、旅人となって暮らすとかいう道もなくはなかったはずだ。しかし「故郷を救おう」という志と奴隷商人からテア達を救った。ということがのちにシュナ(つまり言葉を話し、意思を持った状態のシュナ)が人間に戻れるようになった要因ではないかと思う。

 

【シュナが戻れた理由】

僕はシュナが人間(意志を持ち、話せる元の状態)に戻れたのは、テアの手厚い看護だけではないと思う。神人の力によってあの状態になったはずなのだから、神人の手でないと戻せないと考えた。つまり、神人は、シュナの揺るぎない「故郷を救う」という意志とテアを救ったという行動からシュナを許したのだと思う。

 

【神人】 

神人があの緑の巨人なのか月なのか、そうではないのかは、よく分からないが人間を超越するものの存在であることの象徴であることは確かだ。なぜ、麦を育てているのかなどは不明だが、「緑」の巨人ということも考えると自然の象徴なのではないか。

 

シュナの旅』、映像化されなくても十分に楽しめ、宮崎駿作品の雰囲気が凄く伝わるのではないかと思う。ストーリーも簡潔で、何よりも故郷に帰るところで物語が終わるのがなんともいいものだ。

「シュナとテアとその妹の旅は、始まった。」

そのように終わる物語。物語の終わりだが、旅がまだ終わっていないことを示す終わり方。素晴らしい終わり方だと思う。

 

是非、この『シュナの旅』のオーディオドラマを聴いてみてほしい。 

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